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INTERVIEW 2024.06.22
上園歩美のあゆみ 〜その2〜

上園歩美のあゆみ 〜その2〜

社会人から、鹿児島大学水産学部大学院に入学したきっかけは?

生活に節目があって、その時に「思いきってこれまでと違うことをしよう」と思い、海外留学を考えたんです。釣りの専門知識をもっと高めて、釣りを仕事にして、生きていきたいと思って。

2020年の春からオーストラリアに留学する計画を立て、準備していたんですが、そのときにちょうどコロナの時期に入ってしまって。計画が白紙になって、仕事もどうしようと思っていたところに、MBCのテレビ番組で、鹿児島大学水産学部の大富潤教授をアシスタントするという、海の情報番組出演の仕事をいただきました。

もともとわたしは、学生の頃から先生の本を愛読するくらいの大富教授のファンでした。ポニーメイツとして大富先生にラジオ出演を依頼したこともありました。

その大富教授の番組コーナーがすごく人気で。 海の豊かさを学び、触れて、食べて、鹿児島の地魚、海の話、トントコ漁の話などを、先生と一緒に取材して回るというものでした。

海の取材を通して、何か変化が?

番組内で、漁業が衰退しつつある現状、漁師が辛い惨状の中にあるということを直に目の当たりにしていく中で「魚っていうのは、ずっとあるものだと思っていたけど、先生が言うみたいにもしかしたら食べられなくなる時代がやってくるかもしれない」と思うようになり始めたんです。釣り好きの一人としても、鹿児島の海の資源のことを、これまで以上に真剣に考えるきっかけになりました。

ある時の取材の帰りに、先生から「大学院の一般講座を受けてみれば?」と言われたことがありました。『面白そうだな~』と思って調べてみると、ちょうどコロナで開講していなかったんです。他に学ぶ手段はないかと探していると、先生から『興味があるなら社会人入学してみたら?』と言われました。先生はきっと冗談か、その場しのぎでおっしゃったのかもしれませんが、私は結構本気にしちゃって。色々悩んで、チャレンジしてみたいと先生に言った時には、なんと入学の応募締切までに二週間くらいしかないという状況だったんです。先生もびっくりされてました(笑)。

大学院ではどのような研究を?

大学院では、「薩摩半島西岸沖の深海底曳網漁における未利用資源に関する研究」というタイトルで研究しています。(インタビュー時 2023年12月)

例えば、海でとれる魚の中には、「食べられる」という社会認識がないために市場に流通していないものも多いんです。深海魚も、海上で漁師さんに捨てられている魚は多くあります。

例えば、同じ深海魚でもタカエビ(ヒゲナガエビ)やメヒカリ(アオメエソ)、ノドグロ(アカムツ)は食べられる。でも、スミクイウオ、オオメハタ、キホウボウはいらない、というふうに、魚によって「売れない」魚が海上で多く捨てられています。

これは、「食べられないから」ということではなく、美味しいけど、市場に持っていっても売れないから、コストをかけて陸に揚げる必要もないので、海上で捨てるということです。

そういった「海上で捨てられる魚」を未利用魚として位置付け、わたしはその未利用魚を有効活用できないか研究を進めています。

かごしま深海魚研究会のことを教えてください。

研究会の最終目的は、今海上で捨てられている魚を、いかに水揚げして、漁師さんの収入の底上げに繋げていくかということ。その基礎研究が、今わたしが行っている研究です。食べたら美味しいのに、食べられないまま捨てられているもったいない魚の現状を少しでも変えることができたら。

とはいえ、そういった市場に出回らない魚を安定的に漁獲し供給するというのは難しいため、どちらかというと居酒屋などのお店で「鹿児島のうんまか深海魚」というくくりで、認知が広がっていくことを目指しています。

大学院生活を振り返っていかがですか?

大好きな魚のこと、海のこと、知りたいことばかりで面白いです。今はただ、興味があることを学んでいるという感じ。学んだことがいろいろと散らばっているので、それらをこれから時間をかけて接着していきたいと思っています。 大学院を卒業したら起業も視野に入れていて。 6次産業化を繋げるパイプになれたらいいなと思っています。また釣りのマナー教室とか、観光客向けの釣り場の整備など、大学院での学びや、タレント業、釣りの専門性が活かしていけたらいいなと思っています。

プロフィール
上園 歩美

鹿児島を拠点に、テレビやラジオのレポーター、タレントとして活躍。大の”釣り好き”として知られ、Instagramでは釣果などを公開。フォロワーは2万人以上。釣りのマナーアップ教室などでも各地で講義。2022年に鹿児島大学水産学部大学院に社会人としてリカレント入学し、かごしま深海魚研究会の代表を務める大富潤教授の研究室に所属。2024年3月に卒業。