TOPICS
INTERVIEW 2024.04.08
上園歩美のあゆみ 〜その1〜

上園歩美のあゆみ 〜その1〜

鹿児島を中心にテレビやラジオで、レポーター、タレントとして活躍する上園さん。大の”釣り好き”として広く認知され、釣り具メーカー『グローブライド』開催のオーディション「DAIWA スーパーフレッシュアングラー2018」にも高倍率の中選出され、地元鹿児島や全国で釣りの楽しさを発信しています。現在は、社会人として仕事をしながら、鹿児島大学大学院農林水産学研究科にて、深海性の未利用魚介類について研究されています。(インタビュー時 2023年12月)釣りのこと、鹿児島の海のこと、学びのこと、おうかがいしました。

上園さんにとって、鹿児島の海の魅力とは?

鹿児島は南北600キロ。まず錦江湾があって、太平洋、東シナ海があって、さらに細かく言うと砂浜、磯、リーフ、離島があって、幅広い釣りのジャンルを楽しめるのが魅力だと思います。 東西南北広い範囲に釣り場があるということは風向きや天候が多少悪条件でも釣り場を変えればいつでも釣りができるということです。他県や遠方にいかなくても、多彩な釣り場が身近にあり、いつでも釣りができるのですから鹿児島は釣り人にとっては「パラダイス」なんです。

魚種も豊富で、タイ、アジ、サバなどの定番の魚はもちろん、北海道などの冷たい海に生息するメバルから、沖縄などの温かい海に生息するスジアラまで、同じ鹿児島県内で釣ることができます。なかでも鹿児島南方の島しょ域で釣れるロウニンアジ(通称GTジーティー)は最大クラス60キロ越えで、日本中・世界中の釣り人がこの魚を釣るのに憧れてやってきます。釣り人にとって、こんなに恵まれた地域はなかなかありません。

釣りの魅力とは?

釣りの楽しさは、魚がかかった瞬間の強い引きとか、大きい魚が釣れた時の達成感とか、歩きながら釣れる場所を探して、ようやく釣れた時の喜びとか、釣りのスタイルによって様々だと思います。

わたしが一番好きなのはクロ釣り。フカセ釣りという釣り方で「メジナ(通称クロ)」を狙います。フカセ釣りはウキを使った釣りで、撒き餌をして、エサの付いた仕掛けを投げ投げ入れます。潮を読んで、撒き餌の投入位置や仕掛けを投入するタイミングを合わせないと撒き餌と付け餌がうまく同調しません。釣りをするときはいつも海の中の様子、魚の気持ちなどを想像するんです。どうやったら釣れるかを考えるのがすごく楽くて、釣れなかったとしても面白い。病みつきになります。

魚を食べるのも大好きで、釣った魚は自分で捌いて料理するし、食べきれない分は周りの方に配ったりしています。まれに料理屋さんに持って行って調理してもらうこともあります。プロはやっぱり専門的なので、大きな頭の兜煮とか、骨のアラから出汁をとっておつゆにしたりとか、内臓まで余すことなく調理したりとか、とにかく素材を最大限に活かして調理されているのでさすがだなぁと思います。

これからチャレンジしたいことは?

やっぱり、鹿児島の釣り人口を増やしたいですね。釣りのモラルやマナーを守って楽しめる釣りファンが増えてくれたらうれしいです。

よく、「釣り人が増えると海が汚くなる」と言われます。でも、そもそも、どうして釣り場が汚れるかっていうと、釣りに来た人たちが釣りのマナーやモラルをきちんと知る機会のないままに、ひとり勝手に釣りを楽しんでしまうから。そういった”釣りのマナーを知る機会”を、子供たちの釣り教室などでもっと増やしていければいいですよね。みんなが楽しめる釣り場づくりを子供たちに伝えて、次はその子供たちが先生になって、次の人に伝えていけたら。すると、ますます釣り場も綺麗になっていく。そうやって、鹿児島中の釣り場をきれいにしていくことを目指しています。

ここまで散々鹿児島の釣り場としての魅力について話してきましたが、、、実は鹿児島には釣りの初心者が気軽にいける釣り場がそこまで多くないんです。例えば、マナーが悪くて立ち入り禁止になってしまった防波堤や、漁業の邪魔になるということで閉鎖された港、けがをされてからでは困るということでそもそも釣りができないエリアは数あまた。でも、釣りはただの遊びではなく「感動体験」、「命のありがたみ」、「仲間たちとのコミュニケーション」など、生きる上で大切なことを教えてくれます。

自然に触れる機会の少なくなった子供たち、現代を生きる大人たちに釣りを通して、鹿児島の海の豊かさ、ふるさとの偉大さを感じてほしい。そのためにも、初心者にも楽しめる釣り場の仕組みづくりや環境整備などを、広い視野をもって釣り人口増加のために取り組んでいけたらいいなと思っています。

タレントとして、”釣り好き”のイメージが定着したきっかけは?

釣りメーカー『グローブライド』が、10年に一度「DAIWA スーパーフレッシュアングラー」という、”次世代の釣り人に釣りの楽しさを伝える”というコンセプトの、気鋭の若者を発掘するオーディションを開催しています。

2018年開催の同オーディションで、何千人の中の12人に選ばれたことが今のわたしの活動に繋がる大きなきっかけになったと思います。そこから、全国のテレビ局の番組出演や、DAIWAの取材といった活動の幅も大きく広がりました。

上園さんと釣りとの出会いは?

人生で初めて釣りの楽しさを知ったのは、徳之島でのことです。もともと父が小学校の教員を務める転勤族で、わたしは父の赴任先だった台湾で生まれました。2歳で薩摩川内市に転勤し、その後5歳で徳之島に引越します。父が釣り好きだったこともあって、徳之島ではたびたび家族で釣りに行きました。ある日、近所の港で100匹以上のアジが釣れたのが衝撃で、楽しかったのを今でも覚えています。

それから、9歳で鹿児島市内、11歳で垂水と引越し。垂水では家が海に近かったので、海は公園感覚でした。もずくをとったり、天然のゴカイを捕まえてエサにし、魚を釣ったりということを体験しました。ブリの養殖イケスを見せてもらった思い出もあります。

その後、中学2年の時に国分の山奥に引っ越して川でハヤを釣ったり、それを持ち帰って唐揚げにして食べたりということもありました。自分で釣った魚が、家族に喜んでもらえるのがすごく嬉しくて。そういったたくさんの釣りの経験から「釣りをすればいろんな人と仲良くなれる」という感覚も芽生えていったと思います。また、その後思春期特有の反抗期がやってきたときも、父とは普段の会話はほとんどないのに、なぜか釣りに行く時だけは自然と話ができたりして、その頃の私にとって釣りは特別なコミュニケーションツールでもありました。

本格的に、釣りにハマったきっかけは?

社会人になって不動産会社に就職したんです。採用の面接試験で、「昔から釣りが好きです」と話したところ、社長が大の釣り好きで、話がはずみ(笑)。不動産の専門知識も資格もなかったので「大丈夫かな」と思っていたんですが、採用をいただきました。

入社して社会人になると、休みのたびに、会社の仲間たちと磯釣りに行くように。今でもホームグラウンドは坊津の秋目というエリアです。わたしが本格的に釣りにハマりだしたのはその頃からです。初めてのお給料で釣り道具を買い占めて、毎週の休みはもちろん、お正月も、休みはほとんど釣りという生活でした。この頃は毎度磯釣りだったのですが、記録を付けたら半年で60回も磯釣りをしていました。

タレント活動をスタートしたきっかけは?

ある日、勤め先の社内のテレビでMBCラジオの「ポニーメイツ募集」の広告が流れたんです。じつは、わたしは昔からテレビアナウンサーに憧れていて、その広告を見た時に学生時代の進路先に「ポニーメイツは?」と先生から提案されたことを思い出したんです。

「ポニーメイツなら、ラジオやテレビに出られるかも」と思い、会社に黙って受験をしました。ポニーメイツの面接試験では釣りの話をしました。社会人生活の2年間、釣りにいきまくっていたので、釣りについて、ものすごく詳しくなっているんですよね。地名とか、魚種とか、仕掛けとか、専門的なことも普通にすらすらと話せて。すると、その時もたまたま、面接官の中にもすごく釣り好きの方がいらっしゃって(笑)。また釣りの話で盛り上がって、ポニーメイツにも採用されました。

ポニーメイツのラジオ中継では、釣りや魚の専門知識を積極的に活かしてレポート。すると、釣り系のテレビ取材や情報番組も担当させてもらえるようになり、そこからがわたしのタレントのスタートでした。その頃から「釣りなら上園ちゃん、魚といえば、海といえば上園ちゃん!」というイメージが定着していったと思います。

プロフィール
上園 歩美

鹿児島を拠点に、テレビやラジオのレポーター、タレントとして活躍。大の”釣り好き”として知られ、Instagramでは釣果などを公開。フォロワーは2万人以上。釣りのマナーアップ教室などでも各地で講義。2022年に鹿児島大学水産学部大学院に社会人としてリカレント入学し、かごしま深海魚研究会の代表を務める大富潤教授の研究室に所属。